速書きの裏ワザ

速記符号を覚えれば誰でも速く書けますが、もっと速度を上げるためにはさらなる工夫があります。ここではそんな裏ワザをちょっとだけご紹介します。

単語符号はだれでも発明できる

「私」などのように、どんな場面でもいつも出てくる単語があります。これを1音ずつ「ワ タ シ」と書かずに、一つの符号であらわすのが単語符号です。発言の中にしばしば出てくる単語には、単語符号ができています。

時代の進展とともに新しい時事用語も次々に生まれます。単語符号がない言葉に出会ったら、自分なりの単語符号を発明しても一向に差し支えありません。後で自分さえ読めればよいのですから。

こんなおもしろい単語符号もあります。

日本(衆議院式、早稲田式)
2本の平行線→ニホン→日本(衆議院式、早稲田式)

困る(早稲田式)
小さい丸→コマル→困る(早稲田式)

上回る(中根式)
上方に丸→ウエマル→上回る(中根式)

速く書くコツは、書かないこと

聞いたことをすべて覚えていられたら、速記符号は要りません。しかし、そんなことは不可能ですから、速く書くためには、後で思い出す手がかりとして必要最低限のことだけ書きとめればよいのです。逆に言えば、知っている言葉や後で調べればわかることは、できるだけ書かずに省略するのが速く書くコツです。

例えば発言の中にしばしば「二酸化炭素」が出てくるとき、符号は「ニサンカ」あるいは「ニサ」のように省略してしまいます。ただ、後から「二酸化窒素」が出てきたら大変です。両者の区別がつくように、とっさに省略の仕方を変えなければなりません。

もっと長い言葉を省略することもできます。

演会で講師が次のように自己紹介をしました。

「私は千代田大学文学部日本語学科の東京太郎と申します。」

こんな場合、所属と名前はさっと1本線を引くだけで済ませることもできます。「私は――――学科の――――と申します。」の部分だけ符号で書いておけば、後で困ることはありません。講師のプロフィールは資料で速記者の手元にも届いているからです。

速記者は、こうしたさまざまな工夫を凝らして、少しでも速く書けるように努めています。